子守歌
※シネタ
何処か
戦の終わりを告げる音が遥か遠く或いはとても近くから聞こえ小平太はぼんやりと目覚めた
目覚めた瞬間冷たい土が頬に当たり驚く。その拍子に細かな砂利が頬に傷をつけた
起き上がろうとした
だが四肢はピクリとも動かない、ちからをこめて顔を動かせばさらに頬が砂利で擦れ痺れが走る。
鈍い痛みが頬に広がり、それに反した無気力な身体、そして気づく
終わったんだ、と
ちからなく小平太は眼を動かす、見えるのは大量に広がる屍のほんの一部と焼け焦げてチラホラとした雑草
つんと鼻につく臭いにわずかながら眉を寄せ、再び眼を綴じる。
倒れた身体は自分のものと思えない、自らに生を教えてくれるのは自身を脈打つ心臓の鼓動、それはゆっくりゆっくりとこだまする。
あったかいご飯がたべたいな
食堂を思い浮かべた。
テーブルに広がる小平太の大好物が湯気をたてる光景、だが唾を鳴らす水分はもはや小平太の身体には残っていない。
肉じゃが、天ぷら、ボーロに饅頭。魚と焼き飯それから、それから
布団で眠りたい
お腹いっぱいになって、長次の隣で眠りたい
太陽の匂いが広がるあったかい布団にくるまって長次のおっきな身体に抱きつくんだ。そしたら長次は私の頭を優しく撫でてくれる
胸に耳をあてれば長次の心音が聞こえてくるんだ、それはなんとも心地よい子守唄
いま私の中を脈うつ心音とは似ても似つかぬ
そうして夢現のまま小平太はゆっくりゆっくり意識を閉じた
(ここは寒いんだ、ねえ長次)
【子守歌】
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