寂しがり屋(鉢屋)
薄い襖に頭をもたれ目を閉じて10 数える
「いち、に、さん」
中庭で数人の笑い声が、襖を伝わり鼓膜に響く「 ごぉ、ろく」
声は遠ざかりかわりに聞こえてくるのはやわらかな、風のささやき。さわさわと木々の葉が擦れ合う音は微細で、なんだか耳がくすぐったくなるようだ。昼下がりの間延びした時間のすきま
ふと、目の前が瞼を通して陰ったことに気づいて目を開けて顔をほんの少しだけ上げた。
「寝てたの」
彼は、不思議そうに俺を見下ろしていた。俺はいいやと首を振り、それから、じゅう、とつぶやいて彼の足元にゆっくりゆっくりしがみついた。
「へんなの」
彼は、そんな俺をみて苦笑いしながら腰を落として、それから漸く思い出したように、ただいまと言った。待ちくたびれたよ
「おかえり」
ふと気づいた、もう日が暮れそうな気配に。
end
【寂しがり屋】
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