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電車のホーム

ぴゅうぴゅうと身を切り刻む北風に吹かれて朝と夜の間を歩く。沈んだ街にひとり歩く。紺色の空を頭上に掲げて歩く。
簡単だ、両手をおおきく空に挙げればその瞬間から頭上の空はぼくのもの
鼻と口から白い息を出しながらひたすらに歩く。
街はぼくの空に飲み込まれ、ぼくの心と同じ色に染まってく、どうしようもなく救いもない絶望の色だ。
むず痒くなりくしゃみが出て、弾みで乾いた眼から涙が一粒頬を転がった。ぽろりと落ちたそれは地面に落ちて小さく小さく円を浮かべる。
この円の中に吸い込まれてしまいたいと思った




彼が行ってしまったこの世界ではぼくとゆう人間は本当に、ああ本当に価値がなく生きる術を持たないのだ。それでも今日もやることがあり、世界が動く。ぼくも動かなければならない

ああそれでもああ彼がいなくてそれをどうしてもぼくは受け入れることができない
世界は残酷だ

どれくらい歩いたのか、見知らぬ駅にたどり着き、ひっそりとしたそのたたずまいに救いを求めて入りこんだ瞬間から空を放り投げた。


始発まで大分時間があり、ホームにひとり佇んで、小さいころにおばさんから教えてもらった童謡を口ずさむ。ぼくが歌うと彼は誉めはしなかったけど、目尻のしわを増やし、柔らかい笑顔でぼくを見ていたものだ。

あの日がとうに戻らなくなることにあの日のぼくは気づいていたのだろうか。

朝焼けに遠い東の空はそれでもわずかに橙色が滲んでいて願わくば彼が幸せでありますように、と心に思った




end


J→レーラァ


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